【不妊治療と仕事】心のバランスが取れるようになるまで

不妊治療と仕事
Photo by cocoti(photoAC)

これまでの記事で、不妊治療と仕事の両立で、実際に体験したことを、いくつかまとめてきました。

不妊治療と仕事については、もう一つ苦労したことがあります。

それは、メンタル面での仕事との付き合い方です。

いちばん大変だったのか、この点かもしれません。

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治療しながら働くことへの、うしろめたさはどこからくる?

不妊治療をしながら働いているからこそ、出来るだけ会社には迷惑をかけたくない、仕事に穴は空けられないと頑張ってしまう人は多いのではないでしょうか。

わたしもそう思っていました。

「自分が不妊治療しているせいで、ほかの誰かの負担が増えている」

そう思うと、うしろめたさを感じていしまうんです。

そのことが、治療と仕事の両立を、メンタル面で辛いものにしているところがありました。

「なんで、こんなふうに感じてしまうんだろう?」

漠然とそのことが気になっていたのですが、ある日の新聞に載っていた大学教授のコメントを読んで納得しました。

日本の職場では、男性にも女性にも常に全力で働くことを求めてきました。

2019.9.4 読売新聞 安心の設計「妊婦と仕事」

日本って、何かほかのことを掛け持ちしながら働くことがを前提とされていない社会なんだと気づきました。

仮に正社員の人に、仕事より優先するものができたとしたら「それなら、働き方変えれば?」と言われてしまうのではないでしょうか。

だから、不妊治療をしていて、仕事に100%注ぎ込めない自分を、ほかの同僚と無意識に比較して、自分が申し訳ないことをしているような気分になってしまうんだと思いました。

この社会からの無言の圧力が、不妊治療と仕事を両立しにくくしている一面だと思います。

妊娠で仕事は休めない?

働き方をいろいろ変えながら、約9年間不妊治療してきたわたしですが、最後の3年間くらいは、不妊治療というより切迫流産との戦いでした。

わたしは、妊娠はしても流産を繰り返してしまうしてしまう不育症患者でもありました。

妊娠できることはもちろん有難いのですが、妊娠後は切迫流産に怯えながら仕事をし、流産してしまえば、また不妊症患者として不妊治療と仕事の両立が再スタート。

そんな日々を繰り返していました。

**********

はじめて流産を経験したときのことです。

陽性反応が出て間もなく、5週から不正出血があり絨毛膜下血腫にもなったのですが、10週で流産するまで、一度も仕事を休みませんでした。

それは、医者の言う「安静に」という言葉を正しく理解していなかった、わたしの至らなさに原因があるのですが、心のどこかに、
「妊娠で仕事は休めない」
そんな先入観というか、思い込みがあったように思います。

流産してはじめて、
「仕事なんてしてる場合じゃなかった…」
と思ったのですが、それまでは、
「こんなことで休むのは、大げさなのかな」と、思っていました。

安静にしていても、頭は仕事モード

それ以降の切迫流産では、さすがに前回の反省から、診断されたタイミングで職場に事情を話して休ませてもらいました。

でも結局、
「自分しか把握していない仕事を突然放りだすわけにもいかない!」
と思い、午前中は家のPCで業務の引継ぎをし、午後になってやっと横になるような日々でした。

本来、安静生活とは、ずっと横になっていることなので、座って仕事をしているようではダメなのですが、体以上に休めていなかったのは頭のほうでした。

そんなことを複数回繰り返しました。
毎回、
「前回の安静ではダメだったんだ…。今度こそ仕事は気にせず休まないと…」
と思いながら。

決して、職場からマタハラを受けたとか、休むことを許してもらえなかったとかではないのに、完全に仕事から頭を切り離して休むことができない。

「休むのが下手だなぁ」と思いました。

5回の流産を経験して、自分の働き方を反省する

不育症のリスクが見つかっている以上、わたしの流産は、仕事がどうあれ防げなかった可能性は高いです。

それでも5回も流産を繰り返してしまうと、「その原因は何なのか」といろいろ気になり、“自分の仕事へのかかわり方”にも罪悪感を持っていました。

「わたしが仕事のことを気にしているから、そのストレスが悪い結果を招いているのかも…」
とか。

そんな不安と同時に、乗り越えられなかった現実を前にして、
「やっぱり、人の命より大切なものなんてないんだ」
「そんなときに仕事を気にしているのはバカだ」
と反省もしました。

切迫流産は予期せずなってしまうものなので、それに予め備えておく…という発想は、あまりないのかもしれません。

でも、不育症患者であるわたしにとっては、この先も起こりうる出来事。

「いまの状態では、わたしは、いざというときに自分を大切にできないな」
そう思いました。

一時の後悔を、一生の後悔しないためにも、仕事のペースを落とすことを決めました。

働き方改革です。

仕事のペースを落としたら、自分と仕事の間に丁度よい心の距離ができた

わたしの働き方改革は、勤務時間の短縮と、在宅勤務を認めてもらうことでした。

「そう長くなはい残りの治療期間、仕事の負荷をできるだけ減らせるように、いざというとき(切迫流産になってしまったとき)、少しでも仕事を気にせず休めるように…」

そのために上司に直談判し、受け入れてもらうことができました。

結果、在宅勤務は思ったほど活用できませんでしたが、いつもより1時間早く仕事を終えて帰宅できるようになりました。

時間の余裕から生まれるのは、心の余裕!

担当部署に、仕事をお任せできる人員が増えたことにも助けられ、職場を離れると、自然と仕事のことも忘れられる日が増えました。

もともとオンオフの切り替えが下手で、仕事でトラブルなんかがあった日は、夜寝るときも、そのことを考えてしまうような悪い癖がありました。

それに加えて、通院ための仕事の調整に頭を使い、通院で休んだ分の仕事をどう挽回するか、通院後にまた考えて…と、なにかと仕事のことばっかり考えているような状態でした。

それが、勤務条件を変更したあとは、
「一歩、会社の外にでたあとは考えなくていいや!」
と思えるように。

気持ちの面でのスッキリ感は、これまでと雲泥の差です。

結局わたしは、物理的に仕事との距離を取ることで、やっと自分の仕事モードをオフに切り替えることができたのでした。

通院をはじめとした、不妊治療と仕事の物理的な両立は、これまでも、なんとかなっていました。

しかし、気持ちの面では仕事の負荷が大きくて、両立できている気がしませんでした。

それが、やっと程よい距離を置いて付き合えるようになった感じがしました。

仕事を辞める、辞めないと白黒つけずにぶら下がらせてくれた職場と、わたしが抜けた穴を埋めてくれた職場の仲間には感謝しかありません。

正論だけでは片づけられなかった、仕事との付き合い方

切迫流産のとき、わたしと同じように仕事で悩んでいる方が、ネット掲示板で質問しているのをよく読んでいました。

そこには、
「仕事と赤ちゃん、どっちが大切ですか!」
「赤ちゃんを守れるのはお母さんだけですよ!」
と回答がついていることが多かったです。

それは間違っていなくて、正しいことなのだけど…。

そうズバッと言われると、守れなかったわたしは妊婦失格なんだろうかと。

いざ自分のこととなると、目の前にある仕事をポンと投げ出せないし…。

自分に、職場に、おなかの中の赤ちゃんに…。
様々な罪悪感と付き合いながら、結局、わたしは流産を繰り返しながら、やっと仕事と治療との心のバランスを取ることができました。

こんなふうに時間がかかったのは、周りに遠慮する、周りを気にする、人に助けてもらうのが苦手といった性格によるものかもしれません。

全部できなくても大丈夫。そう思える自分に

振り返ってみると、不妊治療中も、妊娠した後も、仕事への向き合い方は、自分の性格との戦いだったように思います。

・完璧主義
・人に頼るのが苦手
・迷惑がかかるのが怖い

わたしと同じような性格の持ち主で、両立に苦労している方も案外多いのではないかと勝手に想像しています。

責任感が強かったり、自分で頑張ろうとすることは、人生においてとても大切なことだと思いますが、歳を取り、様々な出来事を経験していくにつれ、それだけではどうにもならないことが、人生には多いものだと気づきました。

真面目な人ほど自分を追い込みやすいし、完璧を求めることが、結果自分をどんどん苦しめてしまうことに。

特に妊娠・出産。そして、それに続く子育ては自分の意志でコントロールできないことばかり。

そんなときに、不完全でもいい、人に助けてもらっていい、全部できなくてもいいと思えることって、生きていくうえで、とっても大切なんだと思いました。

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