マタニティマークが普及するにつれ、「マタニティマークを付けていて嫌な思いをした」という人も増えているそうです。
その理由を考えてみました。
マタニティマークの目的は?
厚生労働省のサイトによると、マタニティマークとは、
妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの。
厚生労働省 マタニティマークについて
妊娠初期は、赤ちゃんの成長にとっても、お母さんが健康に妊婦生活を送るためにも大切な時期です。
しかし、妊娠初期は外見では妊婦であることが分かりにくいため、マタニティマークを身に付けることで適切な配慮を受けやすくするという意図があります。
マタニティマークは嫌われている?
妊婦さんを守るために誕生したマタニティマークですが、このマークをめぐっては、度々議論が起こります。
妊婦様。
席を譲るのを強要されているみたい…。
自慢…?
マタニティマークを付けていて暴行を受けたなんてのは言語同断ですが、このマークを不快に思う人が一定数いるのが現実のよう。
妊婦を守るためにあるマークが敵視されるのは望ましいことではありませんが、いろいろ思われてしまうこと自体は、分かる気がするのです。
マタニティマークに漂う「幸せ」に敵意が向けられる
マタニティマークは、「配慮が必要です」ということを示していると同時に、「わたしは“妊娠”という幸せを手にしています」ということを、意図せずとも周囲に知らせていることになります。
ちょっと辛口にいうと、
「幸せなくせに席まで譲ってほしいんかい?」
「幸せなんだから、ちょっとくらい立つの我慢したら?」
と、大なり小なり、感情を煽り立てるきっかけになっているのではないでしょうか。
ここまで思わなくても、マタニティマークを見ると、心がザワつく人もいると思います。
同じ物を見ても、その人の置かれている状況によって受け止め方が変わるのは、これに限ったことではありません。
人の心の動きですから、感じてしまうことを止めることはできません。
同じようなマークでも、病気や疾患、障害などで支援を必要とする場合に付けられる「ヘルプマーク」だと、ここまで敵視されることはないのではないでしょうか。
(ちなみにヘルプマークは妊婦も対象のようです) 。
でも考えてみたら、困ったときに支援を受けるためとはいえ、妊娠という自身のプライベートなことを世間に知らせているわけです。
世の中すべての人が赤ちゃんを歓迎してくれるわけではないと思うと、用心も必要なのかも。
マタニティマークって、なかなか扱いが難しいのかもしれません。
「妊娠=配慮が必要」と受け止める人ばかりではない
人は、自分が経験していない出来事については、なかなか想像することができません。
妊娠経験のない人が、妊婦の体調を理解するのは難しいです。
つわりが軽かった人が、重いつわりを経験している人の辛さを理解するのも難しいです。
以前、わたしの職場に、妊娠後期までヒールで立ち仕事をこなしていた女性がいました。
わたしが、
「〇〇さん、もうお腹大きいのに、あんなに立ち仕事してて大丈夫なのかな?」
というと、それを聞いた先輩女性社員に、
「普通はそうよ」
と、軽く返されました。
自分の経験が基準になりやすいので、同姓の方が厳しい見方をするケースもあります。
マタニティマークを見ると辛くなる人もいる
一方で、マタニティマークを見るのが辛い人達も存在します。
わたしがそうでした。
わたしの場合、はじめての妊娠でマタニティマークをもらったときは本当にうれしかったです。
不妊治療の末に、やっと妊婦の仲間入り。
お墨付きをもらったような気分になれました。
しかし、先の見えない二人目不妊と流産を経験して以来、街で見かけるマタニティマークは、わたしにとって“見たくないもの”に変わってしまいました。
「どうして、わたしのところには、赤ちゃんは来てくれないのか…」
「どうしてあの人はお腹に赤ちゃんがいるのに、わたしの赤ちゃんはいなくなってしまったのか…」
見るたびに、心臓がグッと押されるような苦しい気持ちになりました。
マタニティマークに体が反応してしまうんです。
辛かったです。
きっと、妊活、不妊治療中の方や、流産を経験した方なら、同じように感じることがあるのではないかと思います。
わたしのマタニティマークの使い方
では、いざ自分が妊娠したとき、どうしたかというと…。
「マタニティマークを見ると辛かった時期」があったことと、「また流産したらどうしよう」「妊娠していることは当分誰にも知られたくない」という気持ちがあったことから、リュックにくっ付けてはいたけれど、ほとんど出しませんでした。
一時期つわりがひどかったので、「どうしても電車で座りたい…!」というときだけは、遠慮せず座っていられるように見せていました。
それで、電車を降りると同時にしまう(笑)
8か月頃まで、業務上必要な人以外には妊娠を知らせていなかったので、ほとんど隠し持っている状態でした。
でも、それで安心できたし、お守りのようなものでした。
8か月頃から普通に付けるようになりましたが、その頃になると付けなくても妊婦と分かるので、ほとんど「最後の妊娠記念」でした(笑)
「このマークを付けるのも、これで最後だなぁ…」なんて思いながら。
※後から知ったのですが、マタニティマークで危険な目に合わないために、隠しながら持っている、優先席に座るときだけ出しているという人はそこそこいるようです。そのように指導する病院もあると聞いて驚きました!
そうはいっても、辛いときは役に立つマタニティマーク
さて、マタニティマークをめぐる様々な感情について考えてきました。
しかしながら、しかるべき社会的意義があって作られたマークです。
実際、妊娠初期でつわりがひどいときは、マークのおかげで優先席に座りやすく大変助かりました。
つわりには個人差がありますが、わたしがひどかった時期は、電車を降りてトイレに駆け込んだことも。
こんなふうに、マークに助けられている人がたくさんいることも事実。
おおいに活用すべきと思います。
もしかして、
「特に具合が悪そうでもない女の人が、スマホを見ながらゆうゆうと座っているな、と思ったらマタニティマークを付けていた」
という状況に、腹が立つ人もいるかもしれません。
でも、妊娠初期は、本人に自覚がなくても体の中でいろいろな変化が起こっている大切な時期です。
むしろ、何か起こってからでは手遅れの場合もあり、そんな時期くらい配慮を受けてもいいと、流産を繰り返したわたしは思います。
最近は、おしゃれなマタニティウエアが多いので、服装によっては妊娠後期でも「ん?妊婦さん?」って分かりづらいこともありますし、付けてもらうことで、周りも変に詮索せずに席を譲ったりできます。
妊婦さんにとっては適切に活用すべき便利なツール。
周囲はそれを、できるだけ温かく見守ることができるといいですよね。
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