みんなが悩む、不妊治療のやめどき
不妊治療をはじめた全員が、無事に赤ちゃんを授かることができるなら、悩みはそれほど多くありません。
でも、希望どおりに進まないことだらけだから、たくさんの不安や悩みがでてきます。
そのなかでも、最も大きな悩みの一つが、「不妊治療をいつまで続けるか」ということではないでしょうか。
なかには、治療を開始する前から
「何回チャレンジしたらおしまい」
「〇歳になったらおしまい」
と期限を設けたという方もいますが、わたしたち夫婦には、そんな発想がありませんでした。
治療に対する知識はもちろん、不妊治療というのがどんな世界なのか、まったく知らないまま飛び込んだ感じです。
だから、思うように授からず治療がどんどん長引くにつれ、
「いつまでこの生活を続けるのだろう…」と随分と考え悩みました。
年齢…?お金…?体力…?
何をもって決断すればよいのか…。
結局、42歳で次男を出産することで、この悩みは結論がでないままになってしまったのですが、そこにたどり着くまでの過程で、悩みながら気が付いたことをまとめてみました。
最初は40歳までと思っていた
「いつまで治療を続けよう…」
そんな疑問が頭に浮かぶようになったのは、38歳ではじめての流産を経験したときからです。
そのときに思ったのは、「40歳まで」。
33歳から通院しているので、40歳はひとつの区切りかなと思っていました。
いや、正直なところ、
「40歳になったらやめよう」
ではなくて、
「40歳までにはもうひとり産めるだろう」
が本音でした。
二人目を諦めて治療を卒業することは、当時はまだ想像できませんでした。
自分が不育症だとは思いもしなかったので、治療がこんなにも長引くことも想像できなかったのです。
ところが、それからの3年で5回連続の流産。
40歳はあっという間でした。
流産の原因も分かったような、分からないような中途半端な状態で、治療をやめようにもスッキリしません。
納得感、やりきった感がまったくない、消化不良を起こしているような心境でした。
「せめてもう一度妊娠して、ヘパリン注射を試すまではやめたくない…」
というわけで、「40歳まで」という卒業ラインは自ら撤回することになりました。
次に考えたやめどきは、42歳
年齢を区切りに治療をやめるのはなかなか難しいと思いながらも、このままズルズル…、いつまでたってもやめられない自分が怖くて、次の区切りを42歳にしてみました。
これには3つの理由がありました。
<理由1>
不妊治療の助成対象が42歳までであること。
不妊治療を受けた女性の妊娠率が年齢が上がるほど低下することから、助成には年齢制限が設けられています。
わたしは40歳までに全6回の助成を使い切っており、既に受ける権利はなかったのですが、この年齢の目安には一理あると思って参考にしました。
<理由2>
残りの子育て期間を考えて。自分が60歳のときに子が18歳。
定年は今後ますます伸びると考えられますが、ある程度現役のうちに子が成人していたほうがリスク回避になります。
<理由3>
長男が小学校に入学する年齢であること。
いままで不妊治療にかけてきた労力を、そろそろ心を切り替えて、長男の成長のためにかけてあげるタイミングかなと思いました。
小学校に入学すれば、(保育園生活とは違って)小さな子どもたちを目にする機会も減るので、気持ちも切り替えやすいと思ったのです。
「40歳まで」と思っていたときは、あまりやめる覚悟もなく、なんとな~く決めた線引きでしたが、今度は、<理由3>のような「環境の変化」もあったので、以前よりは覚悟ができていました。
自然とやってきた「体の変化」「心の変化」
さて。
「40歳まで」と心で決めていたやめどきを返上して臨んだ採卵では、5つ受精卵が胚盤胞まで育ち、わたしは「5回も移植できるなら、1個くらい上手くいくはず…」とかなり希望を持っていました。
ところが、移植しても移植しても、妊娠しない。
不育症の治療をするためには、まずは妊娠しないことにははじまらないのに。
「これはもう、年齢が原因なのか…」
卵子の老化。子宮の衰え。そんな言葉が頭をよぎります。
「わたしには、もう妊娠する力が残っていないのかも…」
ここへきて、いままでのようにはいかないという「体の変化」を感じはじめます。
まだ最後のひとつの凍結胚が残っているというのに、
「この移植が終わったら、わたしは一体どうするだろう…?」
ということばかり考えていました。
「もう1回、採卵する?」
「でもそれで妊娠しなかったら、もう1回採卵するの?」
「どこかで区切りつけないと、永遠に終わらないよ?」
結論のでない自問自答のなかで、ようやく、
「こんなことを、ずっと続けるわけにはいかないな」
と、いい意味でのあきらめの心が芽生えてきました。
「心の変化」が、じわじわと起こりはじめたのです。
この移植のあと、もしかして、もう1回、2回採卵したくなるかもしれないけど、わたしは確実に治療をやめる、「やめられる」と思いました。
やめどきが見えはじめたのは、3つの変化から
わたしの場合、このような感じで、次にあげる「3つの変化」がなんとなくそろいはじめて、やっと「治療をやめる」という将来を現実味のあるものと捉えられるようになりました。
それまでは、いくらやめどきを決めたといっても、結局「口だけ」だったのです。
- 環境の変化(長男の小学校入学。家族にとって新しい生活がはじまる)
- 年齢に伴う体の変化(体力、治療の手応え、生理周期の変化など)
- 心の変化(治療への熱意の低下、治療への納得感、ほかの選択肢を考える心の余裕)
とはいっても、完全に受け入れるには、まだまだ時間がかかるのですが…。
やめどきは、ゆっくり訪れる
あらかじめ「治療は〇歳まで」と決めて、そのときがきたらスッキリ卒業できたなら、とても理想的なことだと思います。
でも、現実にはなかなか難しいですよね。
年齢も影響するし、お金のかかることなので、どこかで必ず区切りが必要ですが、あとになって、
「もしもあのとき、やめていなかったら…」と後悔しないか心配してしまいます。
わたしは自分で経験してみて、やめどきは、いろいろな心の波をやり過ごしながら、自然とやってくるのかなと思いました。
体の変化はもちろん、心の変化も必ず訪れると思います。
そのためには、納得のいくまでやりたい治療をしてみることだと思います。
治療のやめどきについては、いろいろな掲示板でたくさんの人のコメントを読んだのですが、いちばん心に残った言葉が、
「パッションがなくなったら治療をやめる」
というものでした。
なんだかとっても腑に落ちました。
不妊治療を続けることは、気力に体力、時間もお金もかかって、とてもエネルギーのいることです。
そのエネルギーを保ち続けられる期間は永遠ではないと思います。
だからこそ、エネルギーのあるうちは、納得のいくまでチャレンジしてみる。
そうすれば、自然と変化は訪れる。
それまでは、自分の心と体の声に耳を澄ませながら、ゆっくりとやめどきが訪れるのを待ってみるのがよいのではないでしょうか。
やめどきは、急いで決めなくていいんです。
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