流産の悲しみを癒してくれたもの

流産・切迫流産
Photo by チョコラテ(photoAC)

妊娠という最高の喜びから、流産という悲しみのどん底へ。

この感情の落差は、ほかの出来事ではたとえようのないものがあります。

わたしは3年間で5回の流産を経験し、それこそジェットコースターに乗っているような3年間でした。

いまでこそ客観的に当時を見つめることができますが、その時期のわたしは、日々どんなに楽しいことがあっても、心の底には常に悲しみを抱えているような状態でした。

そんな状態から、どうやって心が癒えていったのかを振り返ってみました。

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同じ体験をした仲間と出会う。話す。

不育症の治療をはじめたのに流産していしまい、
「これ以上、わたしはどうしたらいいんだ…」
と、先のことを考えられないくらい途方に暮れた時期がありました。
4回目の流産を経験したときです。

そんなとき、流産・死産経験者のためのセミナーを見つけ、参加しました。

検索して見つけたのか、病院で知ったのか… どういうきっかけでそのセミナーを知ったのか…。実はその時期の自分の行動について、あまり覚えていない部分があります。(辛すぎて記憶が消されてしまったのか…?)

ただ、気力が沸かず何にもしたくない思いと、何か行動しないとこの状況から抜け出せないのではと思う気持ちとの間で揺れながら、セミナーに申し込んだことは覚えています。

「面倒だけど参加してみよう。たぶん参加したほうが自分にはいい。先のことは、それから考えよう」

流産から約1ヵ月後に開催されたそのセミナーでは、講師の方の死産・流産の体験談や専門家のお話を聴きました。

座談会では、ほかの参加者の方の体験や気持ち、心の迷いを聴き 、また、わたしも自分のことを話ました。

語られることは辛い経験ばかりなので、わたしもたくさんもらい泣きしてしまったのですが、参加したあとは、不思議ととてもおだやかな気持ちになれました。

ともに語り合った座談会のメンバーとは連絡先も交換していないし、その後、誰とも会うことはなかったけれど、いまでも心でつながっているような感覚があります。

わたしと同じように流産を繰り返しているという、あるメンバーが、「流産は辛いけど、赤ちゃんがほしいなら、治療は続けないといけないんだよね」と、自分の思いを語ってくれました。

それは、わたしの思っていることと同じでした。
私が向き合っている現実もたぶんそう。
分かってはいたけど、この先の不安や恐怖でブレーキがかかっていた部分でした。

でも、彼女の言葉を聞いて、不思議と
「立ち止まっていても、赤ちゃんはやってこないんだ。このあとも治療は続けよう」
と決心することができました。

これで悲しみの数が減ったわけではありません。
しかしこのセミナーは、わたしにとって、前に進む大きなきっかけとなるものでした。

同じような経験をした人がほかにもいると知ること、そういう人達の思いを聴くこと、また、自分の体験を話すことが癒しになったのだと思います。

気の済むまで悲しむ

「こんな初期の流産で、いつまでも悲しんでいてはいけない。早く立ち直らないと…」

最初はこんな風に思っていました。

初期流産は体の負担も少ないので、少し休めばいつも通りの生活が送れます。
仕事も再開していつも通りの生活に戻ってしまうと、もう、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない…、と悲しみにフタをするように過ごしていました。

でも、先に書いたセミナーに参加して、講師の方が自分の体験を語りながら涙している姿を見て、
「流産して悲しいのは当たり前」
「たとえ何年経とうと、そのことを思い出せば悲しくなるものなんだ」
と改めて思い直し、やっと、心のフタを外すことができました。

「辛い、悲しいと思う自分は間違っていない」

悲しみから立ち直るまでの時間は人によって異なります。

いつまでも悲しんでいると、
「悲しみを引きずっている」
という風に、悲しむことをネガティブにとらえてしまいそうですが、
たとえ何年経っていようと、自分の心が落ち着くまでは、
「いまは悲しんでいい時間、必要な時間」
と思ってよいのではないでしょうか。

悲しみを癒すためには、十分に悲しむ時間が必要。

そのためには、自分のなかに自然とわいてくる感情を否定せず、ありのままに受け止めることです。

仕事をする

流産した後は、たいていは2~3日、長くても1週間の休みで仕事には復帰していました。

すべて初期流産だったので体の負担は少なく、主治医にも「2~3日は休んだら」としか言われなかったので、その通りに職場復帰しました。

なかには、流産したショックで働く気になれない、という方もいらっしゃると思います。

わたしも「いまは何にもしたくないヨ…」と思いましたが、そういうわけにもいかず…。

でも結局、仕事をしている方が気が紛れました。
休んだ分だけ仕事がたまっていて、復帰初日からフル回転…といった具合でしたが、それはそれでよかったのかもしれません。

時間に余裕があるときのほうが、いろいろ思い出してしまい辛かったです。

5回も流産を繰り返すと、
「仕事を辞めて不妊治療に専念したほうがいいのでは?」
と思うこともありましたが、
仕事を辞めてしまうと、それこそ四六時中、赤ちゃんのことばかり考えてしまう自分が容易に想像できました。

24時間、365日。
ずっと悩んで不安で心配なわたし…。

想像しただけで地獄絵図…。

切迫流産の度に長期休暇をもらったていたので、そんな状態で職場に居続けることにためらいや申し訳なさもありましたが、上司や同僚は温かく見守ってくれていました。
在籍させてもらっえて本当にありがたかったです。

家事をする

シンプルですが、家事、特に料理はよかったです。あと、掃除も。
体や頭を使うからか、そのことに没頭できてよかったです。

結局、家の中でも外でも、何かに没頭する、集中するということが、頭のなかから一時的に悲しみを追い払ってくれるのかなと思います。

わたしの場合は、それが仕事や料理でしたが、習い事でも趣味でなんでも、没頭できて気を紛らわすものがあることは、心のケアには大事なことだと思いました。

時間が経つのを待つ

「目の前の事をやっていれば、日が経つよ」

母がわたしにかけてくれた言葉です。

結局、いちばんの癒しになったのは、何をおいても「時間が経つこと」でした。

「日にちぐすり」とは、本当にそのとおりだと思います。

悲しみから抜けられない時は、いま目の前のことをやっていればそれでいい。

無理に悲しみをどうにかしようとしなくても、時間が経つのを待っていればいいのかもしれません。

時間は、誰にでも平等に与えられたもの。

だから、どんなに辛くて落ち込んでいても、かならず時間が何かを変えてくれると思います。

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